印刷代の計算方法

印刷単価概念

印刷の単価を決定する要因は色数と印刷数量(通し数といいます)です。印刷の作業は大きく分けて印刷機を動かすための準備(前段取りといいます)と実際に機械が回って印刷されている状態の2つです。印刷機が回っている間は通し数に応じて発生する金額は比例します。しかし、準備に必要な作業は後に1,000枚印刷しようが10,000枚印刷しようが変わりません。これらを踏まえて印刷単価は設定されています。

印刷代

見積書に記載されている印刷代は一般的には次のような形式が多いと思います。

通し枚数×色数×通し単価=金額

つまり、印刷枚数によって通し単価が決まり、色数が多いほど金額が高くなるということです。用紙の項でも説明しましたが、印刷の準備段階(色調整、水調整、見当あわせ)はどんな印刷部数でも必要ですから、数式で表すと y=ax+b といったところでしょうか。(「y」は金額、「a」は通し単価、「x」は通し枚数、「b」はセットに要する費用です。)しかし、この考え方はカラー印刷を単色の機械で刷っていた頃の話ですから、現在では少々つじつまが合わなくなってきている部分もあります。

刷版代

オフセット印刷機にセットする版を刷版(さっぱん)といいます。従来からある方式は、DTPで作成した印刷データをカラー印刷なら4色に分けて感光フィルムに焼き付けて刷版用のフィルムを作成し、それをアルミ合金の板に焼き付けていました。フィルムは光を通さない黒い部分と光を素通しする透明な部分からなり、版に密着して光を照射します。この光景から「版を焦く」とか「焦き付け」などと呼ばれています。照射後は現像機を通り表面の処理が行われて、光が当たった部分は親水性となり、当たらなかった部分は親油性となります。インキがのる部分を「画線部」そうでない部分を「非画線部」と呼びます。

オフセット印刷の版は直接紙などとは接触せずゴム胴に転写しますが、高速で接触、回転(輪転機は毎分600~1,000回転〔印刷機械カタログ値〕)していますから、版の表面が摩耗してインキののりが悪くなります。通し枚数の多い仕事では、20万枚前後で版を取り替えなければなりません。したがって、刷版代もその取り替え回数分用意しなくてはなりませんから、見積に反映しているはずです。例えば、両面とも4色刷りの印刷であれば版は8枚必要ですが、通し枚数が50万枚だとすると取り替え用の版が2組(8枚×2=16枚)必要となり、合計で8枚×3=24枚となります。見積明細には「4/4×3」または「4×2×3」などという書き方になっているはずです。

最近は、版を焦くためのフィルムを出力せず、前工程で作成したデータをレーザーを使って直に版に焦き付けるシステム(CTP:Computer to plate)が普及してきました。この理由は、フィルムを使って焦き付ける際に光が回り込む現象(回折といいます)により、フィルム上の網点より若干小さくなってしまい、作成データが忠実に表現できなくなるのを回避するためです。さらに、フィルムを廃止することによる二次的なメリットも見逃せないのです。すなわち、リピートに備えてのフィルム保管が不要になる、不要フィルムの廃棄と現像液の廃棄がなくなることによる環境への負担軽減です。特にフィルムの現物保管は場所と管理する人の確保を考えるとその差は大きなものになってきます。ただ難点は価格がまだまだこなれていないので、従来の刷版と比べて割高となっている点でが、これも時間の問題で、印刷のデジタル化は加速していますからフィルムが姿を消す日は近いでしょう。


用語説明

枚葉機(まいようき)と輪転機(りんてんき)・・・ 枚葉機と輪転機の使い分けは様々な要因で決定される。

  • 用紙:輪転機は巻き取り紙を使用する関係上、直径に制限がある。同じ直径でも紙が厚くなれば巻き取れる長さが短くなるので、頻繁に巻き取り紙の交換をしなくてはならない。一般的に104.7g/㎡までの紙なら輪転機で印刷可能。(127.9g/㎡印刷可能の機械もあり)
  • 品質:輪転機は高速で印刷するため、枚葉機のインキより粘度の低いものを使用している。これはゴム胴から紙への転写をスムーズに行うためで、粘りが強いと紙の表面がゴム胴のほうへ剥がれてしまうからである。その弊害で、網点がきれいな丸ではなく、紙の進行方向へ少し楕円形になってしまう現象が起きる。写真をきれいに再現しなければならない印刷物は、網点の再現性のよい枚葉機を選ぶことが多い。
  • 枚数:用紙や品質の条件が同じであれば、枚数の多いものは輪転機を選択する。最近の傾向としては輪転機を選択する枚数が下がってきていることである。その他、輪転機は紙を折ることができるので、後加工として製本する場合などコストダウンにつながる。

水なし平版・・・ オフセット印刷の難しさは水の調整の難しさといっても過言ではない。水もインキも流体なので定量化、数値化が難しく、デジタル化による数値化、薬品による安定化を進めているが、根本から発想を転換したのが水なし平版である。従来の親水性部分をシリコンに置き換えてインキをはじくようにし、管理の難しい水を排除した。水を使わない分インキに乳化(本来混ざらない水と油だが、水が細かい粒子となって油に混ざってしまう現象で、これが印刷で発生するとインキに水が入り込み、インキ本来の色がでない)が起らないので、発色がいいのが特徴である。

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